赤い花 2 目を覚ますと見慣れない場所にいた。 あたりを見回し医務室なのはわかるのだが、いまいち記憶がはっきりしない。 まるでここ数年がごっそり抜け落ちているように・・・ 思い出そうとしても何もない。この感覚は強制的に消されたのだろう。 前にも戦場での記憶を消されたことがある。まぁ、軍にとって都合が悪いとこだったのだろうが。 だがこんなにも丸々抜けているとこは今までは無かったはずだ・・・ 色々考えていてもまるで何も出てこない。 ギロロが考え込んでいると、すっと看護士が意識の回復時間に合わせて確認をしに入ってきた。 「ギロロ伍長、気分はいかがですか?」 「いや、特にかわったところはない」 看護士は計器の確認をして、どんどん記入していく。数値に異常はなさそうだ。 だが記憶洗浄についてはなにも言ってこないようだった。 「おい、俺はもう戻っていいんだろう?」 こんなところにいるのは正直御免だ。 それより早く自分が無くした年月分の記憶を補わなくてはならない。 とりあえずケロロのところにでも行き話を聞くか・・・
医務室を出て廊下を歩いていると前から数人が歩いて来た。 「誰が俺の記憶をいじっていいっていったんだよ」 心底機嫌が悪そうな声で部下と思われる者に悪態をつく。 「し、しかしクルル曹長、これは上からの命令でして・・・!」 つかつかとギロロを通り過ぎようとしたクルルが思わず振り返り、ギロロのベルトを思い切りひっぱった。 「んな、何をする貴様!!!」 殴りかかろうとするギロロを必死の思いでクルルの部下達が静止した。 そんなギロロを尻目にクルルはギロロのベルトを食い入るようにみている。 「なんでアンタが俺が作ったもん付けてんだよ?」 「はぁ?」 確かにギロロのベルトには見慣れない小さな機械が装着されていた。 自分で付けた記憶など全くない見慣れないものが。 クルルはカチャカチャとその機械をいじっていたが、それを見た部下達が焦りだした。
『本人達の記憶につながるものは全て処分せよ』
これが上からの命令だった。 つまり二人が重傷を負ったことも一緒にいたこともすべて消し、まっさらな状態にさせたのだ。 それがまたたまたま廊下ですれ違い、クルルがギロロに付けさせたと思われるもので二人の接点ができてしまった。 これは記憶を戻す切っ掛けになるかもしれない・・・! クルルはまだ状況を読み込めていないギロロの腕をひき走り出した。 「お、おい貴様なにを!?」 「いいから黙ってろ、おっさんっ!」 ふと口から出た言葉に懐かしさを感じた。 それはギロロも同じだったようで、少し動揺しているように見えた。
やはりこいつと俺はなんかあるな・・・
部下達をうまくまいたのを確認すると、ギロロをつれ自分の研究室にギロロを通した。 「お前は誰なんだ?俺はお前など知らないぞ?」 ふと怪訝そうな顔をクルルに向けていった。 いったいどうなっているんだ? 自分が大切にしているベルトにこいつが作ったと言っている機械がなんの為についているんだ。 先ほどからベルトをクルルに渡し、クルルはその機械をいじくっていた。 普段は決して他人に渡さないベルトだが、自分が知らないものがついているのはやはり気持ちが悪い。 とれるものならとってもらいたいのだが・・・ 「これでとれるはずだぜ」 クルルが機械から手を離すと、それは形を変え地面に落ちた。 丸い輪っかの様なもの・・・ 「これは何なんだ?」 ギロロはなんだかわかっていないようだが、クルルにはわかった。 だからなおさら恥ずかしい。 自分が作って、なおかつカモフラージュまでさせてこのおっさんに持たせようとしていたもの。 「これはポコペンでファッションで付けたりするもんで・・・」 「それが俺にどう関係あるんだ?」 「・・・恋人に贈ったりするもんでね」 思わずギロロも言葉を失った。 い、いや待て、こいつは男であり俺も男だろうっ!こ、これは何かの間違いだ!!きっと何かの部品だ!!! 必死に自分に違うと言い聞かせている中、クルルがふとギロロの手をとり左手の薬指にはめてみた。 「ぴったりだな」 その指に合わせてあるのか本当にぴったりだった。 ギロロは絶句したまま頭の中が真っ白になった・・・ほ、本当に俺はこいつとそういう関係なのか? 口をぱくぱくさせているギロロをみながらふと思った。 確かめるなら手っ取り早いほうがいい。 「おいっ」 ギロロがその声に顔を上げる前にクルルはすっと顔をつかみギロロにキスをした。 「んなっ!!」 あまりに驚いて言葉につまったギロロにまたキスをしようとしたクルルを思い切り突っ張る。 「き、貴様なにをするっ!!!」 「あ?記憶がないんだから身体に聞いて確かめるしかないだろう?それとも今のキスだけで気持ちよかったのかい?」 思わずギロロの顔が真っ赤になった。 実際こんな細い奴だ、俺が本気で抵抗すればすぐはがせるはずなのに自分はそれをしなかった。 むしろ力が入らなかったと言った方が正しいかもしれない。 知らぬ間に受け入れる体勢になっていたのだ。 自分でおかしいと思いながらも、そうなっていたのは事実だった。 そう行動した自分も気になる・・・ 「くくく・・・、急におとなしくなったな。じゃあ試させてもらうとしますか」 クルルに押し倒されそのままキスをした。 舌を入れられ舌を引きずりだされ甘噛みされ、からめられ。 身体が自然に求め反応していく・・・するりと腹をなでさらにクルルの手は下へとのびていき、 ギロロの立ち上がりかけたものにふれた。ギロロはおもわず身体をビクッと震わせた。 「なんだ、ちゃんと感じてるじゃんおっさん」 くくっと笑う声が耳に届いたが、言い返すこともできない。 頭の中で記憶がない真っ白な部分がうずく。 思い出したいのにそれは出てこず、じれったい。 なおもクルルはギロロをせめたてている・・・
「・・・、がっ、気持ち、わ、るい・・」 「あ?」 「頭の・・・中、が、気持ち悪い・・・」
まるで傷口がいたむようだ・・・ 傷口・・・?頭、の・・・? 一気に涙が溢れ出し、どうしようもなくなった。 何故だ、何故涙がこんなにもでる・・・ 記憶が無いからだろうか? 俺はこいつに何かしたのか? 記憶に無い感情だけがどばどばと溢れ出していった。 ふとクルルの方を見た。 「おい、大丈夫かよ?おっさん?」 クルルもさすがに心配そうな顔をしている。 こいつは元気だ。ならそれでいいではないか・・・ こいつが近くにいるなら、それでいいような気がしてきた。 目を閉じると真っ赤な真っ赤な血の海だけが焼き付いている。
*** あぁ、なんか途中で書いてて困りました。色々。 一応赤い花の続きってことで。記憶戻るのだろうか・・・(苦笑)そして続くのだろうか・・・? ちなみに二人が共に居るということが軍にとって駄目だということ。 風紀をみだすとかそういうことだったっと思いましたが、考えたのが前すぎて忘れました(汗) どちらにしても軍がそういうのを目障りとしていた、みたいな感じで記憶の削除対象にしたとということです。
05.12.07 戻る |