記憶の欠損

 

 

「こんな時ばかり下手にでやがって・・・
ケロン軍本部から送られてきた包みの中身をみながらクルルは毒ついた。
  敬愛なるクルル曹長
  新薬サンプルについて意見をいただきたい。
どうせ人体実験したはいいがワクチンが効かなかったんだろう。
じゃなきゃ、わざわざ俺のところまで送ってくるはずがない。
にしても・・・
「また変なもん作ったな
・・・
書類に目を通しながら呆れたような顔になる。
投与した相手の最も重要な記憶の経路を断つ。
要するに記憶の最重要部を消して、混乱させるというものらしい。
戦場で敵性宇宙人にでも使って命令を忘れさせるきか?
何にせよ下らない代物だが、本部命令だ。無視するわけにもいかない。
とりあえずオッサンに試してみるか・・・
どうせ日向夏美関連を忘れるんならデータがとりやすいだろ。
厳重に保護されている箱を開け、中のサンプルを手に取る。
小さな容器には液体が入っていた。
何か違和感がある
・・・
「んなっ!?」
気付くのとほぼ同時に容器は破裂し、液体が直に手についた。
マジかよ

熱に反応して割れるようにあらかじめしかけてあったらしい。
本部の奴等、もともと俺ごと実験台にするつもりだったようだ。
意識が段々と薄れる。とりあえず
・・・他のサンプル、を、しまわねぇ・・・・・

・・・・・・・・

「クルルっ
!!大丈夫でありますか!?
頭上で声がした。頭に響くからでかい声出すなよ。
にしても、ここはどこだ・・・
薄ぼんやりと天井をみて、ここが基地内の医務室だと認識する。
なんでこんなとこにいるんだ。
クルルはゆるゆると起き上がりケロロへと視線を向ける。
「クルルさー、何やってたのよ

侵略会議にでてこないから呼びに行けば、ぶっ倒れてるだもん
我輩驚いたでありますよ〜!」
待て、つじつまが合わない。まず何で俺が倒れなきゃならねぇんだよ。
記憶を辿りながら違和感を感じる。
何か空白があるような
・・・

バタン、という音と共に2人入ってきた。

タママ二等兵と・・・


「クルルっ
大丈夫か!?

・・・


「あんた、誰?」

一瞬の沈黙。
「き、貴様、ふざけるのは時と場合を考えろ
!!
誰もふざけちゃいねぇよ。しらねぇからしらねぇって言っただけだろ。
そう言い機嫌が悪そうにそっぽをむいた。
クルルの顔はいつもの陰湿な笑みを含んでいない。
こいつ、ほんとに
・・・?
「あ、ねぇクルル。我輩たちはわかるわけ?」
自分を指差し恐る恐る聞いてみると、クルルは頷き、「ああ」と答えた。
こりゃ頭のうちどころがわるかったんでありますか?

「ギロロ伍長だけわかんないの?」
怪訝そうな顔でクルルは頷く。

一同静まりかえっていると、堰を切ったようにギロロが言いった。
「ポコペン侵略なら俺の記憶があろうが無かろうが関係ないだろう」
いうなりギロロはそのまま部屋をあとにした。

まぁ、確かに隊の奴の一人や二人の記憶がなかろうと俺には支障はないからな。

・・・・・・・・

クルルの記憶がないまま数日がすぎた。

自分の記憶の欠損した理由を探しつつ、自分が忘れているという『ギロロ伍長』の経歴に目を通していた。
なんでこいつの記憶が頭から消えるんだ?
それにこのことに触れると頭が、痛てぇ・・・


頭を手で押さえつつ、自分のパソコンのデータを洗い出す。
ん?なんだこのファイル。
中に入っているものは全て把握しているはずなのに、記憶にないものがあった。
これも無くした記憶の一部か?
そのファイルをクリックし、呼び出されたデータに目を落とす。

一瞬我が目を疑った。
その記憶からすっぽり抜け落ちてる相手との画像。

ベットの上で交わす体。
無理やりキスをして、そのまま犯す自分。
それも幾つもある。

理由が見えない。つじつまが合わない。

痛む頭を手で押さえながら少し考えていると、来訪者を知らせるベルがなった。

「クルル、いるか?」
ギロロの声がした。

・・・・・・


「いるぜ」
ラボのコンヒュータに向かったままのクルルから返事がかえってきた。
「話す時はこっちをむいたらどうだ」
たく、いちいち・・・
仕方なくイスを回し、ギロロの方を向いた。
「なんの用だよ」
面倒臭そうにこちらをむいたクルルにギロロは書類を手渡した。
「ケロロからだ。次の計画の書類らしい・・・」
ギロロと目が合い頭に痛みが走る。
まただ、また頭痛がする・・・
「確かに渡したからな。」
そのままでて行こうとするギロロをクルルは呼び止めた。
「?
・・・なんだ?」

ギロロが立ち止まったのを確認し、さっき見つけた画像をラボの画面全体に流した。
次々にウィンドウがあらわれ、とめどなく画像が流れる。
ギロロは鋭い視線をクルルにむけた。
「何がしたい・・・」
赤い顔をいつもより赤くし、あきらかに怒っている。

確かめるんだよ。空白の記憶のわけを。

「へー、あんたとこういう関係だったのか。『戦場の赤い悪魔』と言われるあんたがねぇ・・・」
ギロロは怒鳴り散らすのを我慢し、無言で出て行こうとする。
逃がすかよっ・・・
イスの下から機械のアームがでてき、ギロロを捕らえ、無理やりイスに拘束する。
ギロロはアームから逃れようと動くが、余計に締め付けられる。
「クソっ!」
軽く足を広げたように拘束される。
記憶がなくてもこうなのかっ!
クルルはそのまま無理やりキスをし、下半身をまさぐりだす。

「本当にそうなのか確かめてみようぜ、ギロロ伍長」

ギロロの顔が一瞬驚き、そして曇った。

バキッ!

アームが壊れる音がした。と同時にクルルも腹をおもいきり蹴られた。
「頭を冷やせ、バカ者!!」
そう怒鳴り、ギロロはそのまま早足でラボを出ていった。

痛ってぇー
・・・くそっ。

座り込んだままクルルは舌打ちする。
涙、かよ。


早足で出ていったギロロの目には薄く涙がたまっていた。
まるで理由が見当たらない。つじつまがあわない。
ぼんやりと上を見上げつつ、先ほどよりひどくなる頭痛にたえた。

 ー
記憶の欠落が多過ぎる。そんなにあいつといたのか?ー


ひどくなる頭痛に耐え切れず下を向き頭を押さえていると、見慣れない箱が目に入った。
開けると、見慣れない薬がある。


・・・・・・


ギロロはラボからそのまま射撃場へと向かった。

無心に的を打ち抜く。

ふとクルルが自分のことを『ギロロ伍長』と呼んだのを思いだす。
あいつは俺のことは『センパイ』だの『オッサン』だの『あんた』としか呼んでいなかったはずだ・・・

銃口がわずかに的からはずれた。

気が散っている。しっかりしろ、俺。
頭をふり、再度銃口を的へと移した。
「クルルのことでありますか?」
いきなり後ろから声をかけられたのでギロロは驚いた。
銃を置き即座にケロロへ言葉を返そうとしたが、言葉につまる。
図星だからだ。
「もしかして、あたっちゃった?」
「・・・いや」
言葉を探すが思うように出てこない。
「だってさ、ギロロいつもは書類持っていってくれたあとはちゃんと報告にきてくれるじゃない?
なのに来ないで射撃場にいたからなんかあったのかなーって、我輩思ったわけ。」
ギロロは少し申し訳なさそうな顔で、スマンと言った。

相当こたえてるみたいでありますなぁ。どうしたもんかね・・・
「クルルとなんかあったでありますか?」
「いや、別に・・・」

全くギロロは嘘をつくのが下手であります。
でもこういうときはあんま触れてほしくないって感じだね。
「そ、ならいいんだけどね・・・」
ギロロの様子も気になりつつもケロロはその場をあとにした。

ケロロを目で見送ったあと、置いた銃をぼんやり眺めていた。
クルルが記憶を無くした方が楽じゃないか。
無理やり性処理の相手などやらされる必要もなくなる。

だが、なんだこの居心地の悪さは・・・


・・・・・・・・・・・・


ギロロは気がつくとクルルのラボの中にいた。
確か射撃場にいたはずなのだが・・・
クソ、体が動かない。クルルに何かもられたらしい。
イスにもたれかかっているのが、やっとというところか・・・

「用があったんでね、無理やりきてもらったってわけ」
声の方に視線を移すとクルルがいた。
だか少し様子がおかしいようだ。
クルルの様子に気をとられていると、クルルはギロロの前にきてそのままキスをした。

「!・・・んっ!」

舌を絡められる。
動けないからだをで必死に抵抗しようとするか、思うように動けない。
しばらくキスをしたあとチュッと音をたて、開放される。
だが、いつもならニヤニヤと陰湿な笑みを浮かべるはずのクルルだが、やはり様子が違う。
頭を押さえ、必死に頭痛にたえている。

クソ・・・頭が痛てぇ。

見慣れない箱の中身は薬だった。
箱の中には薬の詳細が書かれた資料もはいっている。

全く馬鹿げてる。

だか、それが本当かどうかも確かめなくてはならない。
ワクチン無しで記憶の再生を試みてもみた。
だか記憶が膨大なためそこまで手が回らない。
ショック療法ってやつしかないか・・・
薬は記憶自体の消滅まではできないようだ。経路を断たれただけならそれをまた繋げればいい。
そのためには記憶と記憶を繋げられるだけのもの。
記憶の本質に無理やり触れるしかない。
その記憶が自分自身に深ければ深いほど影響は何らかの形でてるだろう。

だか・・・

こんなに頭が痛てぇのは無しだろ。
あまりの痛みに膝から崩れおちる。
動けない。冷や汗がつたう。
ふとクルルの頬に何かが触れた。
ギロロの手だ。
心配そうに覗きこんでいる。
自分も動けないような状態のくせに。

あんた、バカだろう・・・


そのまま手をひき、イスから落ちそうになるギロロをクルルは抱き締めた。
いつもなら薬がきいてようがきいてまいが抵抗するはずのギロロは、
そのままおとなしく抱き締められていた。

頭痛の理由、それはその存在からの拒絶。
その存在が記憶になくても、身体自体の記憶が不快感を覚え頭痛に結び付ける。

理由の見えない苛つき。

そういうことかよ・・・

クルルはおとなしく抱き締められているギロロを少しはなしキスをし、
そのままゆっくり床に押し倒しキスをした。


・・・・・・・・・・・


ギロロが疲れて寝てしまってから、クルルは薬のデータを弾き出した。
今回は自分が実験台にされたんだからな。
記憶は自分が理由を導きだした時点で戻った。
要するに自分自身その記憶への気持ちが、うわまわったってことかよ。

なんともいえず後味が悪い。

クソ。

とりあえずワクチンをつくり、データをでっち上げて本部には送り返した。
こんなもん最初からわかってればこんな苦労はしなかっただろう。
俺に無理やり作らざるをえない状況にもっていきやがって。
記憶を無理やり消そうとしても、身体に染み付いた記憶までは消すことはできない、ということか。
データを送り終えてからクルルはギロロの方を見た。

あんたが一番大切な記憶は何だよ。


****************************


すみません、すみません!
SSにあげてみたなんてほんの出来心です(汗)
でも、バトンスチュを書いてみてはとのお声をいただいたので、
絵で追っ付けるはずもなく、試しに上げてみました。
エロ描写抜かしました(泣)エロは好きですが、自分で書くとなると力量が・・・(って、何いってんだ)
感想などいただけるとうれしいです・・・

05.09.07

 

戻る