赤い花

 

ふと気がつくと視界がぼんやりとしていて、状況が全く読めなかった。
「ここは・・・どこだ?」
たった今戦闘モードから解除されたが、意識がはっきりしなかった。
自分から戦闘モードに切り換えていればこんなことは無いはずだ。
ということは、強制的に優先命令を入れられたということか・・・?

ギロロはまだぼんやりとしている頭で何を行ったか思い出そうと額に左手をあてた。
ヌルッと生暖かい液体がべっとりとつく感覚がする。

血だ・・・

だが俺はどこも怪我などした様子など無い。
ふと自分が右手にナイフを持っていることに気付く。
そのナイフにもべっとりと血がついている。
それも乾くことなくまだしたたりおち、地面の血溜りに波紋を落とす。
その血の滴る様を目でおっていて、ふと目の前に突っ伏している黄色い体が目に入る。
 

クルルー・・・?

と、その瞬間フラッシュバックのように記憶がかけめぐる。



『まぁあんたに殺されるなら本望、か・・・』
クルルの頭をつかみ、首元にナイフを付き立てた俺に対しいつもの嫌味な笑いをうかべ、抵抗もせずに首を切らせた。
自分がかぶったのはこいつの血か?なんでこんなことになったんだ?
まだはっきりとしない意識の中、クルルの傍らに銃が落ちているのが目に入った。
こいつはいつも変な発明品の銃しか持っていなかったから、護身用として持っていろと無理やり持たせたものだ。
銃をもっていながら打たなかったということか・・・

俺だから、か・・・?

ギロロは血溜りに落ちている銃をひろい、銃口を銜え引き金を引いた。


***

なんで俺が逃げるはめになるんだ。
パソコン1つを手に持ち、必死に逃げ道を確認する。
ふと微かに音を感じる。

この音パターンは飛行ユニット・・・

嫌な予感がし、それは確信へとかわる。
少し開けたところへ出ると、頭上からスッと人が降りてきた。咄嗟に銃を構える。

見慣れた赤い肌。

目は完璧にイっちまってる。
強制的に命令を頭にたたきこまれ、尚且つ戦闘モードってか・・・

おっさんは何も言わずに銃口をこちらにむけている。
この状態じゃあ割り込み命令を入れる前にこちらが殺される。
よりによっておっさんを使うなんてな・・・軍のやつら考えたもんだ。
この現状をどうしようも出来ないまま時間がすぎていく。

ふと行動を起こそうとしたおっさんの動きが見え、銃をなぎはらう。
一瞬だか態勢をくずされたギロロだったがずく立て直し、逆にクルルが間合いをとられた。
顔面を左手で鷲掴みされ、首元にはナイフがつきたてられている。
そのままナイフを動かせば確実に頚動脈をかき切られる位置か・・・
ナイフの先端が首に触れ、血が滲む。

チッ・・・これまでかよ。

でもまぁ・・・他の誰かにやられるのは癪に障るが、あんたに殺されるなら本望、か・・・

くくく・・・と笑いが込み上げる。
押さえこまれた手の間からギロロの顔をちらりと見た。
それを合図かのようにギロロの腕が鮮やかに動きクルルの首をかき切った。

 

 

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